Web3コミュニティでGoogle Formが使いづらいワケーーブロックチェーン時代のフォーム「DeForm」(1)【ACVポッドキャスト】 – BRIDGE(ブリッジ)テクノロジー&スタートアップ情報

本稿はアクセンチュア・ベンチャーズが配信するポッドキャストからの転載。音声内容をテキストにまとめて掲載いたします

アクセンチュア・ベンチャーズではこれまでにWeb3・クリプトをテーマにしたポッドキャストを配信してきました。本稿ではそこで語られたエッセンスをまとめ、Web3・クリプトスタートアップの魅力に迫ります。今回はWeb3時代のGoogle Form「DeForm」を開発するKei Yoshikoshiさんをご紹介します。

Web3ストーリー

  • Web3コミュニティでGoogle Formが使いづらいワケーーブロックチェーン時代のフォーム「DeForm」(1)
  • Web3参入を後押し、Dapp開発のハードルを下げるインフラ「Bunzz」(2)
  • シリアルアントレプレナーが挑むWeb3インキュベータ「Tané」が目指すもの(3)

ポッドキャスト全編はこちらから

Web3におけるコミュニティのDAO(分散型自律組織)では、主に所属するユーザのみなさんはDiscordなどのコミュニケーションツールを使って、日常的なやり取りをしています。DAOの中には意思決定する上でのヒエラルキーは存在しないので、何かを決める際にはDAOにいるメンバーの総意を集めることになりますが、ここで少し厄介な問題が生じます。

意見を収集するとなれば、Google Formが使えるという人も多いと思いますが、Google FormにはDAOのメンバーかどうかを判断する機能は備わっていません。実際、Google Formを使うと、悪意あるユーザがボットを使って大量にレスポンスを書き込んでくるケースも多発しているようで、DAOに関わる人たちは、この問題を解決できる方法を求めていました。

DeFormは、2022年11月にコロンビア・ボゴタで開催されたイーサリアムエンジニアのカンファレンス「Devcon V  2022」から始まったプロジェクトで、サンフランシスコを拠点に、開発メンバーは日本人のKeiさん以外全てアメリカ人というチームで構成されています。Web3向けのフォームやサーベイツールだけでなく、DAOのデータ分析ツールなどの機能も備えています。

DAOの効果的運営のためのツール

DeForm

Web3においてDAOをどううまく回していくかは喫緊の課題で、課題が大きい分、この分野のツールも増えつつあります。KeiさんがDeFormを作ろうと考え始めたのは、DAOにおける「メンバーのDAOへの貢献度」が可視化できていない、という課題からでした。DAOは貢献度が高い人の意見が反映される仕組みですが、そのためのツールが不足していたわけです。

「当初、MintKudosというサービスを立ち上げました。MintKudosはDAOなどの中で貢献度を可視化できるツールです。いろんな機能を作り込んでいく中で、貢献に応じてNFTを簡単に付与できる機能をつけました。コースの修了、ワークショップへの参加、イベントでのスピーチ、コンテストでの優勝などに対して、MintKudosを使って何十万ものNFTが配布されました。

さらに、このMintKudosの中で、「なぜ、このNFTに貢献をしたか」を書いて、作った人が承認すればNFTをもらえるという仕組みを作ろうということになりました。この機能は反響が良く、MintKudos内だけではなくジェネラルにしてほしいという声があり、そこからハッカソンで作り込んだという経緯です」(Kei さん)。

ちなみに、MintKudosから独立する形でDeFormが立ち上がったわけですが、従業員エンゲージメントプラットフォーム「Kudos」から商標についての指摘があったため、2023年8月にDeFormへと機能統合されることになりました。MintKudosの開発に従事していた5人のフルタイムメンバーもDeFormのチームに参画するそうです。

ところでDAOを筆頭にブロックチェーンデータを活用したコミュニティのメンバーから意見を吸い上げたり、アンケートを取ったりという作業は、Web3において個人を証明する方法のひとつでもあるウォレットのアドレスを入力してもらうなどの方法を使えば、ある程度の不正を排除し、Google Formで代用できそうな気もします。Google Formが重宝されるのは手軽さゆえですが、それではダメなのでしょうか。

「フォームという機能だけならGoogle Formなどいくらでもありますが、DeFormがやっている新しいことというのは、まずオンチェーンデータです。また、ウォレットだけではなく、その人がどういう人なのかを知りたいので、SNSを連携しています。

自分のコミュニティがどういう人で構成されているのかは、Web3に限らず知りたい要素ではあると思います。でも、Web3は匿名要素が強いので、他の業界よりもあまり知ることができていないんです。そこで(DeFormに)着手しました」(Kei さん)。

Web3というのは、非常にボットが多い空間です。インターネットであれば、ボットを回避するためにCAPTCHAのような、人間が操作していることを担保する仕組みを導入することもできるでしょうが、Web3空間ではイタチごっこが顕著なようです。また、匿名性の高いWeb3であるが故に、個人を特定される情報を提供したがらないユーザの特性も考慮する必要があります。

極端な言い方をするなら、メンバーの顔ぶれを知りたいDAOの運営サイドと、あまり情報を出したくないメンバーサイド。時代として過渡期というのもあるでしょうが、DeFormはその辺りのバランスを絶妙に突いている、と言えるでしょう。現在はSNSアカウントの連携などを活用していますが、将来は、ゼロ知識証明などで対応する可能性もあるとKeiさんは言います。

DeForm で、より効率的なサーベイが可能に

ミートアップの参加者がNFTで認証してサーベイに参加したケーススタディ

プロダクトやサービスを作ったら、ユーザからの反応が気になります。スタートアップなら、ユーザバリデーションとか、ユーザインタビューとかいうプロセスですが、Web3のコミュニティやスタートアップに限らず、このプロセスはあらゆる企業や組織で必要になるプロセスです。しかし、意見の欲しい層から意見を集めることは、ことのほか難しいものです。

まず、意見が欲しい層にリーチする必要があります。例えば、住所やメールアドレスがあれば可能でしょうが、そうであっても、スパムや情報過剰な昨今、求めるユーザにサーベイの要望が届くかどうかわかりません。要望がユーザに届いたとしても、回答してくれるモチベーションにつながるかどうかです。結果的に、従来のサーベイの結果は偏ったものになりがちです。

「Web2やWeb3でやっている人もいると思いますが、普通の製品やサービスを作るときにリサーチはつきものです。逆に今までリサーチができてこなかったことが大きな問題だと思います。どんなユーザがいて、どんなフィードバックをもらって改善していくかは大きな課題です。

既存のWeb2でも結構サーベイツールはありますが、難しいのは対象となる人を探しにいくことなんです。20代のここに住んでいる人に答えてもらうとか、結構大変じゃないですか?

Web3では、オンチェーンデータがパブリックな情報なので、例えば、過去6ヶ月にDeFiを使った人、と言えば、それが全員見れます。仮にその人が我々のプラットフォームにログインすると、「今日は、あなたは対象者なのでこの質問に答えられます」と出てくる。Survey-to-earnのような、答えることでトークンをもらうといったこともできるでしょう」(Keiさん)。

あるサーベイに答えてくれたら、その回答がプロジェクトにどの程度貢献したかに応じて、ユーザにガバナンストークンを付与する、といった運用も可能でしょう。この辺りに、Web3を使ったフォームやサーベイをビジネスで利用してもらうためのヒントがあるようです。現在は、いろんな企業や個人にサービスを使ってもらい、ユースケースを探っていきたいとのことでした。

次回はDapp開発のハードルを下げるインフラ「Bunzz」をご紹介いたします。

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