オンチェーンデータを非匿名化、初心者でも使いやすい分析プラットフォーム「Arkham」とは? | あたらしい経済

「Arkham」とは?

Arkhamは、オンチェーン情報を追跡するためのインテリジェンス・プラットフォーム。Arkhamが独自に構築したデータベースインフラにより、ウォレットアドレスではなくエンティティ(組織名など)ベースで検索できるため、誰でも簡単にオンチェーンデータを分析したり、可視化したりすることが可能だ。

また、個人ユーザーは費用も手間もかけることなく利用できることも大きな特徴となっている。

この記事ではArkhamの共同創業者兼CEOのMiguel Morel氏が、「KudasaiJP」にて今年5月に日本ユーザー向けに行なったAMA(Ask Me Anything)の内容をお届けする。

初心者でも使いやすい分析プラットフォーム「Arkham」

Q:自己紹介を兼ねて、経歴やArkhamのチームについて教えていただけますか?

Arkhamの創業者兼CEOのMiguelです。私は2017年からCrypto業界で働いています。Arkhamを始める前は、アルゼンチンなどのハイパーインフレ経済に焦点を当てたステーブルコインプラットフォームのReserve Protocolを共同創業しました。

Reserveで働いていたときに、Web2やTradFi(Traditional Finance、従来型金融)で利用できるインフラの核となる部分がCryptoには欠けていることに気づきました。それは、ユーザーを知り、彼らのユースケースを理解し、彼らがどのように製品を使用しているかを分析するための高品質な分析です。

この問題を解決するために、私は2020年にArkhamを開発をはじめました。あらゆる個人や法人を検索し、チェーン全体で暗号資産の活動を確認できる単一のプラットフォームとしてArkhamを構想しました。

私たちの目標は常に、多様なエンドユーザーと、エコシステム開発からトレーディングの精査、個人投資に至るまで、幅広いユースケースに対応することでした。そうすることで、Cryptoが、根本的な透明性という基本原則を完全に実現できるようにすることを目指しています。

Arkhamに取り組んできた3年間で、私たちのチームは15人にまで増えました

Q:Arkhamについて紹介していただけますか? 既存のソリューションが解決できていないどんな問題を解決できるのでしょうか? また競争上の優位点は何ですか?

最も基本的なレベルでいうと、Arkhamはブロックチェーンを「非」匿名化するためのプラットフォームです。私たちが構築したデータセットとツールは、ブロックチェーンの生データが、偽名であり、理解しにくく、分析が困難であるという問題を解決します。

このようなブロックチェーンデータを、アクセスしやすく、読みやすく、使いやすくするために、私たちはブロックチェーンのアドレスをタグ付けし、クラスタリング*して、検索や評価が可能なエンティティ*、個人、トークンのプロファイルを集約することに特化しています。

*クラスタリング:データ間の類似度に基づいて、データをグループ分けする手法のこと
*エンティティ:データベース内の特定の事物やオブジェクトを表すもの

例えばユーザーは、ラベル付きブロックチェーントランザクションのライブフィードを検索、フィルタリング、ソートしたり、上位の取引相手のリストを見たり、任意の2つの日付間のポートフォリオを比較したりすることができます。さらにカスタムアラート、ネットワークマップ、APIなど、このデータを活用するための強力なツール群も構築しています。

Arkhamの検索機能。アドレスではなく、エンティティ(ここでは組織名)で検索ができる
Arkhamによるエンティティのデータ表示画面
Arkhamによるエンティティの可視化機能

多くのブロックチェーン・インテリジェンス・プラットフォームとは異なり、私たちは規制当局や政府、そして彼らのコンプライアンスやリスクを中心としたユースケースへの対応に重点を置いているわけではありません。私たちは何よりもまず、Cryptoプロジェクト、トレーダー、投資家のために構築しています。

この決断は、私たちのビジネスモデルに直接的な影響を及ぼします。大規模なサービス契約やコンサルティングモデルをベースにしている他社とは異なり、私たちはプラットフォームをソフトウェアとして提供しています。参加まで時間のかかるプロセスを経たり、Arkhamチームの誰かと直接やりとりしたりする必要はありません。ログインするだけで、Arkhamのツールやデータを好きなように活用することができるのです。

アドレス中心ではなく、エンティティ中心の方針に基づいて、私たちは消費者向けプラットフォームの中でもユニークなデータの構造化と表示を行っています。つまり、個々のアドレス単位でのデータの検索や分析に制限されず、同じエンティティや個人が所有する複数のアドレスを、同時に検索や分析ができるのです。

Q:少し使ってみましたが、とにかく簡単に使うことができるというのが魅力的だなと思いました。

そうですね、当初からプラットフォームをできるだけ使いやすくすることに重点を置いていました。いつもそのことを意識して社内メンバーと仕事しています。最も簡単で便利なものを作らなければならないと。

Q:バイナンスのエンティティを可視化してみました。このラインは何を表しているのですか?

Cryptoの最大手企業の1つを強力にビジュアル化……パンケーキスワップからかなりのトランザクションがあるようですね。各ラインが1つのトランザクションです。カーソルを合わせたり、クリックすることで詳細な情報を見ることができます。

Q:このプロジェクトのためにチームが構築した技術やプロトコルは? または、チームが適用している注目すべき技術はありますか?

私たちのプロセスの最初のステップは、ブロックチェーンの生データを収集し、他のオンチェーン/オフチェーンの一般に利用可能なデータと結合することでした。そのために、私たちは独自のインフラを運営しています。

その後、私たちはそのデータを集約し、クリーンアップして、バックエンドに保存します。機械学習やその他のエンジニアリング/データサイエンスの技術を使用して、ラベルを決定し、属性を付与し、同じエンティティに属するアドレスをクラスタリングします。これにより、アルファベットと数字のアドレスに現実世界の名称を関連付けることができます。

最後に、私たちはそのデータをフロントエンドに提示し、ユーザーはツールセットを活用して、検索したり、さまざまな抽出をすることができます。大手の機関に対してのみこの貴重な情報を提供するのではなく、私たちはそれをCryptoコミュニティ全体に開放していきます。

もしあなたが、あるブロックチェーンアドレスの所有者が誰なのかを知りたい場合、Arkhamでアドレスを検索していただければ、名前を表示します。当然、背後の所有者が誰なのかわからないアドレスも出てきますが、日々、ブロックチェーン取引に関する取材力の向上に努めています。

今のところ、Arkhamは3億5千万枚以上のアドレスラベルを用意しています!

Q:これまでに達成した主なマイルストーンと、今後のマイルストーンをスケジュールと合わせて教えていただけますか?

2023年の年初から、カバレッジの幅を広げる、つまりより多くのチェーンを追加することに非常に重点を置いてきました。Ethereumから始まり、Polygon、BNBチェーン、Arbitrum、Optimism、Avalanch、Bitcoinのサポートを追加しました。

TronやBase ともパートナーシップ契約を結んでおり、同様にサポートを追加する予定です。ただ現在はカバーする範囲の広さよりも深さに重点を置く方向にシフトしています。そのため最近トークンページを公開し、トランザクションレベルのデータに加え、マーケット・価格などのデータも追加しました。

現在は、DEXのスワップやレンディングプロトコルのオープンポジションなど、DeFiデータを追加することで、さらに一歩踏み込んだ情報を提供することに重点を置いています。

また現在のプライベート・ベータを終了し、この夏には誰もがアクセスできるようにプラットフォームをローンチする予定です。。

Q: 現状ではDefiのデータは見られませんが、これができるようになると本当に便利ですね。ちなみにNFTは検討していないのですか?

まずDeFiのデータをできるだけ早く追加するよう努力しています。今は残高とトランザクションを表示していますが、スワップやレンディングといったものは別のデータとして収集・分析する必要があり、4〜6週間ほどでローンチできると思います。

NFTは未検討でしたが、どうでしょう、NFTサポートを追加すべきでしょうか? 大きなマーケットなので、この夏のロードマップに加えられるかもしれませんね。

私たちは、みなさんの欲しい機能を提供します!

Q:マーケティング戦略を教えてください。初期のユーザーをどのように獲得しようと考えていますか?

一般的に言って、私たちはマーケティングに対して*オーガニックアプローチ、いわゆる「草の根」アプローチをとってきました。

*オーガニック:検索エンジンやSNSの自然流入を利用した集客手法

機関投資家、プロのトレーダー、クリプトメディア、独立系リサーチャーなど、幅広いカテゴリーにわたる高品質で洗練されたユーザーをプライベートベータに招待し、プラットフォームの改善方法に関する彼らのフィードバックに注意深く耳を傾けることから始めました。

昨年8月下旬にプライベートベータを開始して以来、私たちは、必要な機能や追加してほしいチェーンなどの意見を記録することによって、ユーザーに私たちのプラットフォームの方向性を大きく導いてもらいました。

正直なところ、寄せられたポジティブなフィードバックとユーザーの増加に圧倒されています。現在135,000人以上のユーザーがおり、彼らのプラットフォームの使い方に常に感銘を受けています。

今後の課題としては、地理的な観点から、ユーザーベースをさらに多様化させたいと考えています。具体的には、アジアで強力な長期的関係やパートナーシップを築きたいと考えています。

Q:最近ハッキングの事件が多発していますが、セキュリティ対策は?

ハッキングの発見と解決は、実はArkhamの最も強力なユースケースの1つです。ハッキングの可能性を調査・確認したり、盗まれた資金を追跡したりするために、私たちのプラットフォームは簡単に利用することができます。

もちろん、私たちはデータセキュリティを非常に重視しています。私たちのデータはすべて暗号化されていますし、ユーザーがArkhamに持ち込むラベルなどのデータもすべて暗号化されています。

この点も、他のプラットフォームと比較した際の重要な差別化ポイントです。Arkhamでは、手動でアドレスを追加したり、取引所のアカウントやウォレットを接続したりして、ポートフォリオを管理するための独自のデータを持ち込むことができるだけでなく、カスタムエンティティを作成したり、アドレスタグを追加したり、アドレスタグを削除したりして、稼働中のArkhamのデータセットを変更することができます。

このような追加や変更はすべて、完全に分離され、プライベートで、ユーザーのArkhamアカウントに固有のものです。私たちはその情報にアクセスすることはできませんし、他のArkhamユーザーもアクセスすることはできません。

少し例を出しましょう。Arkhamがラベルを貼っていないアドレスがあったとして、その人が誰なのかを知っている場合、ユーザーがArkhamプラットフォームのバージョンでそのウォレットのタグを追加することができます。しかしArkhamチームや他のユーザーからは見ることはできません。

このアドレスは、ラベルが付与されていないウォレットです。

このアドレスのトランザクションは、このようになっています。

これに、KudasaiJPとラベルをつけたらこうなります。

すると、トランザクションでもKudasai JPとラベルがつくのです。

さらに、もしもこのKudasaiJPアドレスがTelegram AMAのものだとわかった場合、Telegram AMAのものであることを示すメモを追加することができます。

非常に重要なことですが、これらのラベルは、ラベルをつけたユーザーだけが見ることができます。他の誰も、そして私たちArkhamチームも決して見ることができません。これらは厳密にプライベートなものです。ただし、もしラベルを誰かと共有したい場合は、WebのURLをコピーして送信することはできます。

Q:運営を維持するための収入源はどのように確保していますか?

これまで私たちは、ベンチャーキャピタルからの資金調達によって事業を支えてきました。これまでに1,350万ドル(20億円)以上の資金を調達しました。プラットフォームをローンチしたら、当然、プラットフォームの利用による収益を得るようになります。

私は当初から、Arkhamをできるだけ多くの人がアクセスし、使用できるようにすることをビジョンとしてきました。そのため私は、ユーザーの多くが無料でこのプラットフォームから利益を得続けられるようにする一方、最大のパワーユーザーや機関投資家のお客様からの収益を運営の大部分とするつもりです。

Q:現在の投資家はどのような方々ですか?

現在の投資家は、Tim Draper(Draper Associates)、Geoff Lewis(Bedrock Capital)、Joe Londsdale、Alex Moore(8VC)です。Joe LonsdaleとAlex MooreはPalantirという会社の共同創業者です。またシード投資家としてOpenAIの共同創業者(ChatGPTの生みの親)がいます。

私たちの投資家のほとんどは、実はCryptoの投資家ではありません。もっと伝統的な業界の人たちです。私たちは、外部の専門知識を取り入れること重要だと考えました。大勢に普及させるためには、より伝統的な外部の投資家を招き、Cryptoマーケットの成長に貢献できるデータ分析会社を作るのが望ましいと考えています。

もちろんArkhamは、クリプトとブロックチェーンのデータに焦点を当てたデータ分析会社です。ただし、直接的なクリプト企業ではないと言ってもいいかもしれません!。もちろん私たちはクリプトを愛し、それがキャリアの焦点ではありますが。私たちは技術とデータ分析に重点を置いています。トークンに重点を置いているわけではないのです。

Q:企業やプロジェクト、著名な開発者などとの契約はありますか?

これまでの正式なパートナーシップの大半は、先に挙げた当社が追加した、あるいは今後サポートを追加する予定のチェーン・エコシステム・パートナーら(これまでに、BNBチェーン、Arbitrum、Optimism、Polygon、Avalanche)です。

先述の通り、私たちは現在、アジアでの拠点を拡大するために、戦略的パートナーシップの形成を目指しています。皆、次の強気相場はアジアからと言ってます・・・

Q:Arkhamに関するニュースや最新情報で、私たちに伝えたいことはありますか?

DeFiデータの追加と一般公開の他に、既存の紹介プログラムに加えて、ユーザーがArkhamポイントを獲得できる方法についての発表にも注目してください。最初にその情報を知るための最適な場所は、私たちのDiscordです。また、Twitterでも重要なお知らせを発信していますので、ぜひフォローしてください。

KudasaiJPコミュニティからの質問

Q:Arkhamのシンボルロゴである五角形は何を象徴しているのでしょう?

まず、こんなにたくさんの質問をくださったことに感激しています!みなさん、本当にありがとうございます!このコミュニティは素晴らしいです!

とても楽しいので、この質問から始めようと思います。今まで誰にも聞かれたことがありません。

まずロゴは、ワシントンD.C.のペンタゴンを指しています。米国の国家安全保障の中心地ですね。私たちは、ユーザーのためにこれらすべてを分散化しています。

2つ目は、ブロックチェーンの一部であることを表しています。

私たちのロゴを相互リンクして、そこからブロックチェーンを作ることができるんです。

最後に、これは眼玉も表しています。これは、ブロックチェーンの動きの表現です。また、すべてのアクティビティは見えてるよということを伝えています。

Q:チームには何人いますか? 将来の成長のために新しい人を雇うことを計画していますか?

今、私たちのチームは前述の通り15人しかいません。エンジニアとユーザーグロースを中心に、あらゆる業種を募集しています。

Q:追跡が大変だと思うブロックチェーンはありましたか? 

Bitcoinはかなり難しく、Ethereumよりもはるかに追跡が困難でした!

Q:膨大なラベリング作業はどうやって実現しているのですか?

機械学習技術や、社内の分析チームなどを組み合わせて使っています。95%はAIがやってくれます。

Q:Arkhamを通してどんな世界を作りたいですか?

誰であろうと、どこから来ようと、誰もが重要なデータにアクセスできる世界です。そのためにCryptoはずっと有益で安全に使用できるようにしたいです!

Q:好きな日本食はありますか?

さて、最後に私の大好きな質問に回答をします。好きな日本食はカレーライスです。

お招きいただき、本当にありがとうございました。とても楽しかったです。最高のAMAになりました!

Arkham関連リンク

この記事について

スピーカー:Miguel Morel(Arkham共同創業者兼CEO)
司会進行:neko
翻訳:nori
実施日時:2023/5/25 21:00
会場:KudasaiJPテレグラムグループ / ツイッタースペース

「KudasaiJP」について

「KudasaiJP」は2020年に創設された暗号資産コミュニティ。DeFi、NFT、GameFiなどトレンドを重視した情報共有の場として活用され、2022年にはTwitterフォロワー7万人、テレグラムグループ2万人の日本最大級のグループに成長しました。2021年に日本語翻訳付きの質疑応答会を開始し、初期段階にある海外プロジェクトを中心にコミュニティに向けて紹介してきました。2022年時点で160件の実績がある唯一無二のグループです。KudasaiJPコアメンバーは全員がコミュニティ出身であり、KOL(Key Opinion Leader)、翻訳家、エンジニア、デザイナー、リサーチャーなど30人以上で構成されており、AMAのみならず、ブロックチェーンスタートアップの計画・開発からコミュニティ拡大まで、多面的な成長支援ソリューションを提供しています。

本AMAは、ブロックチェーンスタートアップが業界での成長と露出を加速するのを支援する活動の一つとして実施したものです。また本記事の掲載は「KudasaiJP」と「あたらしい経済」の提携により実現しました。

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→ディスコード

※本記事は2023年5月25日に、「KudasaiJP」で開催されたphaverのAMA(Ask Me Anything)の内容を一部再編集したものです。

※この記事は一般的な情報の提供のみを目的として配信しているものであり、いかなる暗号資産、有価証券等の取得を勧誘するものではありません。また、当社及びKudasaiJP、インタビューイによる投資助言を目的としたものではありません。暗号資産投資にはリスクが伴います。投資を行う際はリスクを了承の上、ご自身の判断で行っていただくよう、お願い申し上げます。