【仮想通貨取引所の元トレーダーが解説】オンチェーンデータでのファンダメンタルズ分析 | サステナビリティ×ブロックチェーン情報メディア【HEDGE GUIDE Web3】
暗号資産トレード
2022.04.12
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今回は、オンチェーンデータについて、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
- オンチェーンデータの概要
1-1.オンチェーンデータとは?
1-2.仮想通貨のファンダメンタル分析が可能
1-3.オンチェーンデータの入手方法 - ファンダメンタル分析に使えるオンチェーンデータ
2-1.取引所の流入数
2-2.アクティブ・アドレス数
2-3.BTC投資家の流動性(Liquidity of BTC held) - まとめ
仮想通貨(暗号資産)取引ならではの相場分析手段として、「オンチェーンデータ分析」というものがあります。全ての取引記録がブロックチェーンに保存される仮想通貨の特性を活かした分析手法であり、株式やFX(外国為替証拠金取引)にはないものです。
ニュースメディアやSNSでも近年、オンチェーンデータ分析データを目にする機会も増えてきています。そこで今回は、仮想通貨市場のファンダメンタル分析としてのオンチェーン分析の方法について解説します。
①オンチェーンデータの概要
まずはオンチェーン分析の概要について解説します。
1-1. オンチェーンデータとは?
オンチェーンデータとは、ブロックチェーンに保存されるトランザクションデータを集計したものです。
ブロックチェーンはトランザクションデータが永遠に記録されるため、どのようなトランザクションが発生したか、どのアドレスがどれ程の仮想通貨を保有しているかという事が明らかになっています。例えば、マイナーのアドレスから取引所のアドレスへビットコイン(BTC)を送付するトランザクションが増えていれば、マイナーがビットコインを売却傾向にあることがわかります。
このようにブロックチェーンに保存されたデータを解析することで、市場動向を探る分析手法をオンチェーン分析と言います。
1-2. 仮想通貨のファンダメンタル分析が可能
仮想通貨のファンダメンタルズには、規制、採用や開発動向を含むニュース、先物市場のポジション動向などがありますが、それに加えてオンチェーンデータを利用することで、より詳細に市場の流れを分析できます。
オンチェーンデータ分析の頻度は、基本的には短中期的な傾向を掴むのに有益です。特に大口投資家の動きをとらえることで、市場全体に買い圧力や売り圧力がどのように傾いているのか、といった大枠を把握できます。
1-3. オンチェーンデータの入手方法
オンチェーンデータは、それぞれのブロックチェーン毎の「エクスプローラー」で見ることができます。ビットコインならBlockchain.com、イーサリアムならEtherscan等が有名です。ここではハッシュレートやトランザクションデータ、ガス代などのデータリソースとなっています。
これらの素の情報をオンチェーン分析用に加工して提供しているサービスがあり、便利です。代表的な企業はGlassnode、CryptoQuant、そしてChainalysisです。大量ホルダーの動向や取引所の入出金など各種インジケーターを提供しており、一部の機能は無料で利用できます。
②ファンダメンタル分析に使えるオンチェーンデータ
次に数多くあるオンチェーンデータからファンダメンタルの分析に利用しやすいデータの種類と解釈の方法について解説します。
2-1. 取引所の流入数
一般的に仮想通貨の取引方法は、取引所かOTC(相対取引)で行われます。長期投資家が仮想通貨を売却する際には、流動性の大きい大手の仮想通貨取引所を使用します。
一般投資家の中には取引所口座で仮想通貨を保有している人も多いと思います。しかし、仮想通貨の大口投資家は取引所の口座ではなく、外部ウォレットやハードウォレットで保管しているケースが一般的です。
そのため、仮想通貨を売却する際には、外部ウォレットから取引所へ資産が流入することになります。つまり、取引所への流入データは近いうちにその仮想通貨が売却される可能性を示唆すると考えられます。
仮想通貨の価格が下落している状況下で取引所の流入数が増加すれば、さらに下落することを想起させます。上昇傾向にある際に流入が増えれば、売り玉の増加につながるため短期天井のサインと解釈することが可能です。
取引所へ流入した仮想通貨が必ずしもすぐに売却されるとは限りません。なるべく有利な価格で大量の売り玉を裁くには2〜3日かけて小分けに処理する事になるでしょう。つまり、取引所への流入量が増えてから数日間は、売り圧力が強めに働いている相場環境だと考える事ができます。
デジタル資産銀行から取引所への流入
BANK Flowはビットコインの大口投資家の動きをとらえるための指標の一つです。世界最大のBTCレンディングサービス(BTCを預けることで金利がもらえる)である「Blockfi(ブロックファイ)」やKrakenといったデジタル資産銀行からのビットコインの流入量をチェックできます。取引所への流入数をより細かく観測できます。
【関連記事】:クジラの動きをオンチェーン分析で掴む
2-2. アクティブ・アドレス数
アクティブ・アドレス数とは、トランザクションが発生したアドレス数の増減を示すデータです。
短期的なスパンでみると、アクティブアドレス数が急増している時期は、ビットコインの「活発な売買がなされている」と考えられます。逆にアクティブアドレスが減少している時期は、ビットコインが「活発に取引きされていない」ことを意味します。
例えば、2021年1月にアクティブアドレス数が過去最高を更新した時、主要な取引所のビットコインの取引量の合計が2017年の過去最高値を超えて10億ドルに到達しました。保有者がビットコインを売却する一方で、新規参入者がビットコインを購入したためアクティブアドレスが増加し、取引量も増加したと推測されます。
反対に2021年5月にビットコイン価格が下落し始めた時期に、ビットコインのアクティブアドレス数は2020年11月以来の低水準となりました。BTC価格の下落局面でのアクティブアドレス数の減少は、ビットコインのさらなる下降を示唆するシグナルと考えられ、2017年と2019年にも同様の傾向が観測されています。
【関連記事】:ビットコインのオンチェーン分析項目「アクティブアドレス」と価格の関係から相場動向を予測しよう
2-3. BTC投資家の流動性 (Liquidity of BTC held)
ChainalysisのLiquidity of BTC heldは、流動性とは、エンティティが自分のウォレットに保有する資産を動かした割合を示します。非流動的なエンティティは沼として機能するため、購入可能な資産の数を減らします。したがって、流動性の低い資産が増加するほど、価格を上昇させる要因となります。
4月11日時点の過去1週間で、非流動的なBTCは過去8週間で最も減少しました。37120 BTC減少して1562万BTCになっています。
③まとめ
オンチェーンデータを利用したファンダメンタルズ分析は、ブロックチェーンを使用する仮想通貨ならではの分析手法です。今回解説したオンチェーンデータを分析することで、市場全体にどのような圧力が働いているかを判断する一助となれば幸いです。これまでテクニカル分析を重視してきた仮想通貨トレーダーの方も、オンチェーンデータを利用したファンダメンタルズ分析を取り入れることで、よりシャープに市場の状態をとらえることができるようになると思います。
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一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12