STEPN(ステップン)の現状分析:価格、ユーザー数の変動、そして今後の見通し | サステナビリティ×ブロックチェーン情報メディア【HEDGE GUIDE Web3】
今回は、STEPN(ステップン)の現状分析について、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
- STEPNとは
1-1. STEPNの概要 - STEPNの特徴
2-1. 「Move to Earn」モデルを採用
2-2. ゲーム内には二つのトークンが存在
2-3. 新規ユーザーは招待コードが必要 - STEPNの価格暴落の背景
3-1. 仮想通貨市場全体の低迷
3-2. 中国における利用規制
3-3. BNBチェーンのサポート開始 - STEPNの現状
4-1. 二種類のゲーム内トークンのレート
4-2. NFTシューズの価格
4-3. アクティブユーザー数 - STEPNの今後の見通し
5-1. 「LINE Blockchain」上での開発スタート - まとめ
これまで多くのブロックチェーンゲームが登場していますが、「STEPN(ステップン)」は特に注目を集める存在です。日本国内だけでなく、海外でもその人気は高まっており、メディアでも頻繁に取り上げられています。それまで一部の専門家やエンジョイヤーに限られていたブロックチェーンゲームの認識を、一般の人々にも広める役割を果たしたプロジェクトとして知られています。
しかし、そんなSTEPNも、仮想通貨市場全体の冷え込みや、ゲーム内での規制強化などの影響を受けています。特に、ゲーム内トークンやNFTシューズの価格が急落し、最近では話題に上がることも少なくなっています。
そこで今回、現在のSTEPNの状況について、暴落の原因や現在の状態、そして今後の展望について詳しく解説します。
1.STEPNとは
1-1.STEPNの概要
「STEPN(ステップン)」は、歩くことで仮想通貨を得られる新たなコンセプトのブロックチェーンゲーム、「Move to Earn」モデルを採用しています。
2021年12月のリリース以来、STEPNは全世界で60万人以上のユーザーがプレイし、その認知度は急速に広がりました。特に2022年の4月から6月にかけてはその認知度が格段に上がり、メディアでも多く取り上げられるようになりました。こうした経緯から、日本国内でも最も知名度の高いプロジェクトの一つと言えるでしょう。
STEPNのプレイモードは独特で、まずNFT(非代替性トークン)として表現されたシューズをブロックチェーン上で購入します。そして、そのシューズを履いて歩いたり走ったりすることで、報酬として仮想通貨を獲得できます。STEPNでは利用可能なブロックチェーンとして「ソラナ(Solana)」、「BNB」、「イーサリアム(Ethereum)」の三つを提供しています。これにより、ユーザーは自身が最も使いやすいと感じるチェーンを選択できます。
2.STEPNの特徴
2-1.「Move to Earn」モデルを採用
STEPNは新しいゲームモデル「Move to Earn」を生み出しました。Move to Earnとは、文字通り「動くことで稼ぐ」を意味し、歩いたり走ったりするという実際の動きを通じて仮想通貨を獲得することができます。ブロックチェーンゲームの世界では、ゲームを楽しみながら報酬を得る「Play to Earn」モデルが一般的でした。しかし、STEPNはこれとは異なる、現実世界の動きと連携した新しいゲームスタイルを提唱しました。
先ほども述べたように、STEPNではプレイヤーは最初にNFT化されたシューズを購入し、そのシューズを使って運動します。そして、シューズの性能や自分が移動した距離に応じて報酬を得ることができます。そのため、初期投資としてNFTシューズの購入費用が必要となりますが、一度シューズを手に入れれば、日常生活の運動を通じて容易に報酬を獲得できるという点が特徴的です。これが大きな注目を集め、多くのプレイヤーを引きつけています。
2-2.ゲーム内には二つのトークンが存在
STEPNには下記に挙げる二つのゲーム内トークンが存在します。
GMT(Green Metaverse Token)
GMTは、NFTシューズのレベルアップやミント(新規作成)、さらにゲーム内アイテムである「ジェム」のレベルアップやシューズの属性ポイントの追加などに使用できます。
GST(Green Satoshi Token)
GSTはSTEPNのユーティリティトークンとして機能し、運動による報酬として手に入れることができます。GSTはNFTシューズのレベルアップやブースト、ミントのほか、ジェムのレベルアップ、ゲーム内の「ミステリーボックス」の開封時間短縮、NFTシューズの修理、NFTシューズのソケット解除など、ゲーム内でのさまざまな活動に使用することができます。
2-3. 新規ユーザーは招待コードが必要
リリース直後からユーザー数が急増したため、STEPNでは招待制度を導入しました。これにより、新規にゲームを始めるユーザーは、招待コードを入力する必要があります。招待コードは、公式のディスコードやテレグラムなどで毎日一定数が配布されています。また、既にSTEPNをプレイしているプレイヤーからも受け取ることが可能です。
3.STEPNの価格暴落の背景
前述した通り、2021年12月のリリース以来、STEPNは爆発的な人気を博しました。しかし、その盛り上がりも一時的で、2022年5月の初旬をピークに、ゲーム内トークンやNFTシューズの価格が急落しました。
ここでは、なぜSTEPNが大幅な価格下落を見せたのか、その背景について詳しく解説します。
3-1. 仮想通貨市場全体の低迷
2022年5月頃から、仮想通貨市場全体が急速に低迷し、その影響を受けて、「ステーブルコイン」である「UST」と、それに連動していた「LUNA」が大幅に下落しました。USTとLUNAの大幅な下落を受けて、仮想通貨が担保がなくリスクが高いという認識が広まり、多くの投資家が投資を引き上げる動きを見せました。これが、ビットコイン(BTC)やソラナ(SOL)など、仮想通貨市場全体の価格暴落につながりました。LUNAは、わずか一週間で「1LUNA=10000円」から「1LUNA=0.003円」まで、約99.999%の価格下落を記録したことを覚えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
STEPNの基軸トークンであるSOLも、対円レートで「1SOL=12,000円」から「1SOL=6,000円」に半減しました。この変動により、STEPNのゲーム内でもさまざまな影響が生じました。さらに、多くのプレイヤーが所有していたNFTシューズを一斉に売却して現金化し、早期にゲームから撤退する動きが広まりました。その結果、NFTシューズの価格が急速に下落しました。また、「GST」や「GMT」、「SOL」といったトークンを現金化し、ゲーム内のウォレットから引き出そうとするプレイヤーも増加しました。このため、ウォレットシステムは過負荷となり、一時的に資産を引き出せない事態も発生しました。
このように、2022年5月ごろを発端として発生した仮想通貨市場全体の冷え込みはSTEPNにも大きな影響を与え、多くのプレイヤーの撤退を招く結果となりました。
3-2.中国における利用規制
2022年5月、STEPNは、IPアドレスやGPS情報に基づいて中国在住と判断されるプレイヤーに対するサービス提供を停止すると発表しました。そして、2022年7月15日から、中国国内での位置情報を用いた運動に対する仮想通貨の報酬付与が停止されました。
この規制の背後には、「ミント工場」などと称される、複数のアカウントを操作したり、組織的にNFTシューズを生成したりするなど、一部のプレイヤーによる不適切な行動があったからです。「ミント工場」では、多数のアカウントを用いて、実際に運動を行わずに、NFTシューズの生成(ミント)だけで利益を得るという行為が行われていました。中国では、このような行為を行うグループが多数存在していたことが後に明らかになり、これらのグループは中国での規制強化により大きな打撃を受けました。
その結果、NFTシューズを早期に売却し、利益を確保しようとする動きが加速し、NFTシューズの価格は急落しました。大量のNFTシューズやGSTが一気に市場に売りに出されたことによって需要と供給のバランスが崩壊し、供給過多の状況が続いた結果、STEPNに関連するトークンも暴落する展開になったというわけです。
3-3.BNBチェーンのサポート開始
STEPNは、2021年12月のリリース当初はソラナチェーンのみでのプレイが可能でした。しかし、2022年4月には「BNBチェーン」のサポートを開始し、ゲームのプレイフィールドが広がりました。
ソラナチェーンでもBNBチェーンでも、ゲームの内容や基本的なシステムは同じですが、報酬の獲得量には大きな違いが生じました。具体的には、BNBチェーン上でのプレイでは、ソラナチェーン上でプレイするよりもおよそ10倍近くの報酬が得られる時期がありました。初期費用も10倍必要でしたが、それに見合う報酬が得られるため、これまでのソラナチェーン上でのプレイに比べて投機性が増しました。そして、多くのプレイヤーがBNBチェーン上でのプレイを開始し、それに伴い、トークンの価格も上昇しました。
BNBチェーン上で獲得できる「bGST」の価格は、2022年5月25日の時点で約25ドルまで上昇していました。一方、ソラナチェーン上で獲得できる「sGST」の価格は約3ドルでした。このため、例えばソラナチェーンで毎日ジョギングをして50GST獲得していた人が、同じ条件でBNBチェーンに移動した場合、報酬は約16万円と、大幅に増えることになりました。STEPNのプレイヤーの間では、ソラナチェーン上でプレイできるゲームを「S国」と、BNBチェーン上でプレイできるゲームを「B国」と呼び、BNBチェーン上で高い報酬率が得られた現象は「B国バブル」と称されました。
しかし、この反動から、2022年5月26日頃から、NFTシューズの価格は下落し始め、わずか3日間で大きく値を落とす結果となりました。B国のNFTシューズの最低価格は、およそ20BNBから約2BNBへと急落し、わずか数日で価格が1/10まで下がってしまいました。この「B国バブル」の崩壊も、STEPN内のトークン価格の価格暴落を招いた要因の一つとなりました。
4.STEPNの現状
4-1.二種類のゲーム内トークンのレート
2023年4月29日時点におけるGMTとGSTの価格は、それぞれ0.3441ドル(約46.91円)、0.01896ドル(約2.59円)となっています。これは、2022年5月のピーク時にはそれぞれ3.832ドル(約522.39円)、6.531ドル(約890.32円)であったことを考えると、大きく価格が下落する格好となっています。
さらに、SOLの価格は23.66ドル(約3,225.43円)となっています。これも2022年5月のピーク時のレート「1SOL=約12,000円」と比較すると、その差は大きいと言えます。
4-2.NFTシューズの価格
2023年4月29日現在、STEPN内のNFTシューズの最低価格は、約110GMT、つまりおよそ5,160円となっています。2022年5月のピーク時には一足がおよそ20万円を超えていたことと比較すれば、価格は大幅に下落したことが分かります。この価格下落の主な要因は、GSTの獲得金額が減少したことにより、NFTシューズを売却し、ゲームから撤退するプレイヤーが増えたからだと考えられます。
4-3.アクティブユーザー数
ブロックチェーンデータ分析ツールを提供するノルウェーのDune Analyticsが公開したデータによれば、STEPNの1日のアクティブユーザー数は、2022年6月26日に10万5,257人という最高記録を樹立しましたが、その後は減少し、2022年9月には6,000人を下回りました。その後、2022年10月5日時点では1万1,877人にまで回復したと報告されています。
また、アクティブユーザー数の減少などを受けて、STEPNは契約社員の中から100人以上のスタッフを解雇したという情報もあり、その運営には大きな動揺が見られました。
5.STEPNの今後の見通し
5-1.「LINE Blockchain」上での開発スタート
2022年8月に、STEPNが「LINE Blockchain」上での開発を開始したと発表されました。現在、STEPNは「ソラナ(Solana)」、「BNB Chain」、「イーサリアム(Ethereum)」の3つのブロックチェーン上で展開されていますが、今回新たに四つ目のブロックチェーンとして「LINE Blockchain」が加わることになります。
LINE Xenesisは、STEPNの運営を行う「Find Satoshi Lab Limited(ファインドサトシラボ)」と協力し、LINE Blockchainを活用したSTEPNの日本での普及を目指す覚書を締結したと報告しています。これにより、今後STEPNの利用がより簡単になる可能性が期待されています。ただし、LINE Blockchain上でのSTEPNの正式なローンチ日はまだ発表されていませんので、その動きに注目が集まっています。
6.まとめ
STEPNは2021年12月にリリースされた、「Move to Earn」モデルのブロックチェーンゲームで、歩くことで仮想通貨を獲得することが可能です。特に2022年4月から6月にかけて、認知度が急速に拡大し、日本国内で最も知られたブロックチェーンゲームの一つとなりました。しかし、近年では仮想通貨市場全体の下落傾向などから、ゲーム内トークンの価格が急落し、それに伴ってNFTシューズの価格も大きく下落しました。さらに、1日のアクティブユーザー数も減少しており、ユーザーによるSTEPNからの離れが進んでいると言えます。一方で、現在はLINE Blockchain上でSTEPNの開発が進行中であり、ローンチが実現すれば、より手軽にSTEPNをプレイすることが可能になると期待されています。
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一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12